先日、ICF Netherlands(ICFオランダ支部)が主催する「インターヴィジョンセッション」に参加してきました。
ICFといえばInternational Coaching Federation、世界最大のコーチング専門家団体として知られています。その中でもオランダ支部は、今年設立20周年を迎えており、その記念イベントとして「10回のインターヴィジョン+10回のスーパーヴィジョン」を無料または低価格で開催しています。
今回担当してくださったスーパーバイザーは、PCCコーチであり、ダイバーシティ&インクルージョンにも深く関わる Marjolijn Vlug さんと、リーダーシップ&チームコーチとして「社会が場にどう現れるか」という哲学的な問いを実践に持ち込んでいる Camilla Degerth(PCC & ACTC) さんのお二人。
この方々が作る「場の質」が、今回の体験をとても深いものにしてくれました。
インターヴィジョンとは何か?スーパーヴィジョンとの違い
「スーパーヴィジョン」という言葉は、コーチングの世界でも少しずつ知られるようになってきました。資格を持つスーパーバイザーがコーチの実践を観察・支援し、より深い気づきを引き出す構造を持つ対話形式です。
一方、「インターヴィジョン(Intervision)」は、特にヨーロッパのコーチング文化において根付いている実践で、日本ではまだあまり聞かない言葉かもしれません。
インターヴィジョンの特徴は、ピア(同じ立場の仲間)が集まり、教える・教わるという上下関係なく、お互いのリアルなケースを持ち寄りながら共に内省・探求する場である点です。
参加にあたっては、以下のような「現在または最近のコーチングケース」を持参することが求められます:
- 行き詰まり、困難、不確かさを感じているケース
- 倫理的な問いや境界線に関わるジレンマ
- 自分のプレゼンスや在り方が問われた状況
- 強い感情や複雑さが生じた体験
- 「解決」ではなく「深く学びたい」と思った瞬間
重要なのは、これが「問題解決の場」ではなく「内省と学びの場」だということ。すべてのケースはICFの倫理基準に従い、機密と敬意をもって扱われます。
90分の体験——小部屋での深い時間

セッションは90分間でした。そのうち70分近くが、小グループでの実際のワークに使われました。
コーチが集まっているということは、全員が「傾聴のプロ」であるということ。それが生み出す安心感は、普通のセミナーや研修とはまったく異なるものでした。
「ちゃんと聴いてもらえている」という確信のなかで、自分のコーチングの実践について、正直に、深く話すことができる。自分が気づいていなかった視点が、ピアの問いかけやリアクションの中からふと浮かび上がってくる——そんな時間でした。
今回得た学びと気づき
① コーチングは「考えを促進する場所」であれるか
セッションのなかで何度も問い直されたのは、「あなたはクライアントの思考を本当に促進できているか?」という問いです。
これはシンプルに見えて奥が深い。私たちコーチは、ついつい自分の意図や解釈をセッションに持ち込んでしまうことがあります。「クライアントのための場」を純粋に保つために、自分自身のあり方を問い続けることが必要だと感じました。
② セッションを続けるかを判断するための問い
セッションの中で「このまま続けるべきか?」と感じる瞬間がある、というリアルな声が出ました。そのときに役立つかもしれない問いが、いくつか紹介されました。
- このセッションを続けることは、クライアントの行動につながるか?
- クライアントは、新しい行動をとる準備ができているか?
- セッションの中で、ゴールや目的に集中した対話ができているか?
これらは「立ち止まる」ための問いであり、コーチとしての自己点検ツールでもあります。
③ ゴールは変わる——それは失敗ではない
セッションの冒頭に設定したゴールが、途中でまったく別のものに変わることはよくあることです。
それはセッションの失敗ではなく、クライアントの深い部分が表出してきた証拠かもしれない。また、「未来思考」で前に進む人もいれば、「過去を解きほぐすことで未来に進める」タイプのクライアントもいます。そのアセスメントとフレキシビリティが、コーチの力量のひとつだと改めて気づきました。
④ 自分の状態を整えること(セルフマネジメント)
コーチとして誰かの場にいるためには、まず自分が整っていなければならない。ICFコアコンピテンシーでも「コーチング・マインドセットの体現」として位置づけられているこの観点は、知識として知っているだけでは不十分で、日々の実践の中でこそ磨かれるものです。
⑤ 承認(Acknowledging)の深み
ICFコアコンピテンシーのひとつ、「承認」。これについての理解が、今回の体験を通してより深まった気がしています。まだ完全には言語化できていないのですが、ピアの場での「認められている感覚」が、コーチとして前に進む力になるということを、身をもって体験しました。
⑥ コーチができることのラインを引く
コーチングとカウンセリングの境界線、コーチとして介入すべき範囲。これは倫理的な問いの核心でもあります。今回のセッションでは、複数のそうした事例がシェアされ、他のコーチたちの経験を聴くだけで大きな学びになりました。「自分だけが迷っているのではない」という安心感もありました。
日本のコーチとして、ヨーロッパで学ぶ意味
私は日本のコーチングスクールで学び、日本企業に向けてコーチングを提供しています。日本語でのコーチングを主戦場にしているからこそ、ヨーロッパのコーチングコミュニティに触れることで見えてくるものがありました。
問いの立て方、倫理についての議論の密度、「社会がコーチングの場にどう現れるか」という視点——これらは日本の文脈とは少し異なる色合いを持っています。文化や社会背景が、コーチングの実践に滲み出るということ。それを実感できたこと自体が、参加した大きな理由になりました。
また、今回は英語での積極的な発言にもチャレンジしました。うまく伝えられた瞬間の達成感、そして「伝わった!」という手応えが、次の学びへの原動力になっています。これからも英語力を磨きながら、世界のコーチングコミュニティとつながっていきたい。
おわりに——コーチは孤独じゃない
コーチという仕事は、孤独を感じやすい仕事です。クライアントとのセッションは秘密保持の中で行われ、自分の実践を第三者と振り返る機会は、意識的に作らなければ生まれません。
でもこの日、私は確かに感じました。
コーチは孤独じゃない。
同じような問いを持つ仲間が、世界中にいる。その仲間と共に学ぶ場が、こうして存在している。
今回のセッションを開いてくださったICF Netherlandsのみなさん、スーパーバイザーの Marjolijn Vlug さんと Camilla Degerth(PCC & ACTC) さん、そして場を共にしたすべてのコーチたちに、深く感謝します。
これからも、日本とヨーロッパを越えたコーチングの学びを続けていきます。


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